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2024年度 1学期「始業のことば(校長)」

2024年04月04日

1学期 始業のことば(校長)

まず、能登半島地震によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、すべての被災者の方々に心からお見舞いを申し上げる。わたしたちは被災された方々のことを決して忘れてはならない。

3月19日の終業式。本校の原点に返り,建学の精神に基づく「平和・ひと・環境を大切にする学び舎」を意識し,いつも伝えている盈進共育「仲間と共に,自分で考え,自分で行動する」をテーマに話をした。もう一度,終業式に伝えたことを振り返る。

中略

十分な睡眠時間の確保と家庭学習の習慣を身につけること。そして,徹底して,授業に集中する。毎日,毎時間の授業こそ,高い目標に向かう進路そのものであることを肝に銘じること。できるだけ8時間の睡眠確保と最低1時間以上の集中した家庭学習を,盈進は奨励する。

中略

3月末にあった美術部,書道部,写真部の盈華展。毎年,グレードアップしている。頼もしい。

今年度から,本館(新校舎)2階にすべてのクラブの年間と月間の目標を掲示する。今後,明確な目標を持ち,互いに刺激し合って,もっともっと成長してほしい。

中略

2024年度を,それぞれの飛躍の年にしてほしい。諸君の活躍が盈進という集団の飛躍となる。

このような視点を忘れず,日々の生活の中で実践しようとするときに,わたしたちにはどのような心構えや態度が求められるか。

2024年度のスタートにあたり,きょうは,今月から大学生となる先輩たちの声を元に「誠実,真面目,正直であれ」をテーマに話をする。

諸君は終業式の前に各学年で,大学受験を経験した「先輩たちの声」を聞いた。大いに刺激になったと思う。

 

これから,先輩たちのクラブ活動と勉強の両立の話をもう一度,諸君に届ける。その最後に,「誠実さ,真面目さ,正直さ」のバロメーターとなる“掃除”の話を届ける。その先輩たちに,終業式後,校長室でわたしは,先輩たちにトイレ掃除について語ってもらった。

最初に,岡山大学経済学部へ進学した下崎嘉乃さん。毎日,剣道部で汗を流した。毎日,授業に集中して,一生懸命に勉強した。努力して,レギュラーの座もつかんだ。

盈進で剣道をすることは,母に大きな負担をかける選択だった。でも,大学へ進学したい。だから忍耐の生活が始まった。受験勉強に切り替えたものの,すぐに結果は出ない。6年生の夏休み明けの模試,第一志望の岡山大学合格にはかけ離れた点数だった。それでも諦めなかったのは,剣道で培った根性と挑戦する気持ちがあったからだ。クラスやクラブ活動でつながった仲間たち。そして先生方。応援してくれた人たちへの感謝の気持ちを忘れず前に進む。そして最後に。「お母さん,ずっと支えてくれてありがとう」。

二人目は,同志社大学文学部英文学科へ進学する苅屋真応さん。バドミントン部と50年ぶりに復活した応援部。どちらのクラブでも中心的な存在で,大運動会のマスゲームのリーダーでもあった。

特に,英語,国語,数学の3教科から出る課題は,問題を解けば解くほど理解が深まり,力がついた。英語が好きで,英語を通して,世界の人々とつながりと思うようになった。中学2年生で行った「English Tour in Kyoto」で,京都外国語大学の留学生と英語を使って話をしたのがいちばんのきっかけだ。

英単語は毎日,発音しながらノートに書いて覚えた。歩いているときも英単語を覚えた。Listening Timeではとにかく発音に注意した。洋楽を聴いて,覚えた単語が聞き取れたときはうれしかった。こうした毎日の学習が,受験の力となったと思う。

盈進での6年間,たくさんのことに挑戦し,最高に楽しい日々だった。生徒会やHR委員長も,マスゲームのリーダーもやった。バドミントン部と応援部の兼部も最後までやり通した。すべての経験が自分のレベルアップにつながった。

私の好奇心は盈進の中だけに収まらず,JICAやユニタールという国連団体の研修プログラムに参加した。そして,他県や他の学校の若者たちとSDGsなど地球規模の問題について意見交流や話し合いをして,自分の考え方を高めることができた。みなさんも,臆することなく,やりたいことにはドンドン挑戦してほしい。

三人目は,慶應義塾大学総合政策学部に進学する大塚みな美さん。50年ぶりの応援部復活のために先輩たちと仲間たちと困難を乗り越えてきた。

私は,何にでも挑戦したくて岡山県の高梁市からこの盈進にきた。約50年ぶりの応援部復活。

これも私の挑戦だったが,その道程は厳しいもので正直,諦めそうになった時もあった。でも,私のそばにはいつも仲間がいてくれた。私の最大,最高の自慢は,たくさんの信頼する仲間だ。高校2年生の夏,甲子園のアルプススタンドで,世界でいちばんかっこいい「EISHIN」の文字が入った純白の伝統のユニフォームを着た先輩や仲間たちを全力で応援できたことは私の宝だ。

中高合計1200人の盈進は広島県東部最大の学校。だから,たくさんの人がいて,たくさんの価値観があって,いろんなことに挑戦する仲間がいて,みんな日々悩みながら生活している。だからこそ,盈進共育「仲間と共に,自分で考え,自分で行動する」というテーマが実現しているのだと私は思う。大いに悩めばいい。仲間がいるよ。先生もいる。盈進だから必ず前に進めるよ。自分でやると決めたことは,悩みながらもやり抜くんだよ。すると,困難なことでも,いつしか正解になっているからね。

四人目は,高知大学農林海洋科学部,海洋生物生産学コースに進学する森井陽斗くん。

厳しいバレーボール部の練習を終え,職員室のオープンスペースで毎日夜8時まで,本当に根気強く,いつも仲間といっしょに集中して勉強していた姿が目から離れない。

大学の面接試験で役に立ったのが,中学3年生で書いた修了論文と高校での探究活動だ。私は恐竜や海の生き物が好きで,将来は水族館で働きたいと思っている。中学3年生の修了論文では,絶滅した生き物と環境の関係性について調べた。その延長で,高校では,海洋ゴミ問題や養殖について探究した。この学びを大学受験の面接で語った。つまり,中高時代の日々の学習が,私の大学受験の強みとなったのだ。

バレーボールと同じように,自分を鍛え,よりレベルの高い学習をしたいと思い,5年生ではパイオニア特進コースを選択。試験問題も難しくなった分,とにかく毎日,必死に食らいついて勉強した。バレーボールで培った体力と集中力,そして,信頼する仲間たちが私の支えだったことは間違いない。

最後は,北海道大学文学部に進学する民宅航平くん。剣道部男子のキャプテンだった。(中略)

文武両道。これが地元の尾道の学校ではなく,盈進を選んだ決め手だった。盈進には,クラブ活動に全力で取り組みながら,いつでも勉強に集中できる環境があった。読書の時間もありがたかった。おかげでもっと本が好きになり,国語力が自然に身についたと思う。

最後の県大会を終え,持っていた竹刀をペンに持ち替え,受験勉強を本格的にスタートさせた。学校では夜8時まで学習に励み,SF講座では,徹底的に苦手克服に努めた。通学時間も暗記科目に取り組んだ。6年間塾に通わず,とにかく毎日学校で勉強し続けた。

共通テストを終え,次は2次試験だった。担当の先生がついてくださり,個別対策が始まった。自分に何が足りないのか,どこを改善すればいいのか,具体的なアドバイスが大きな助けになった。強い気持ちで受験日を迎えられたのは,こうした環境に恵まれたからだ。

最後に。やはり一番大きな心の支えになったのは,共に6年間を過ごした仲間たちだ。高い目標に向かって努力する仲間の存在。自分は一人じゃない。仲間がいたから,ずっとふんばることができた。

いま紹介した先輩たちに共通するものは何か。それは,何事にも手を抜かないということだ。中でも,掃除。その中でもトイレ掃除。彼女彼らはほんとうによく,トイレ掃除をしていたという印象がある。

中略

知っているだろうか。「陰徳」ということばを。トイレ掃除は,陰に隠れて目立たない仕事。

だが,誰もが必要とする大切な仕事だ。誰が見ていようが見ていまいが,誠実に,そして真面目に取り組む人は,立派に何かを成し遂げる人なんだとわたしは理解している。これにも科学的裏付けは乏しい。しかし,世間の(社会の)道理として,とても相関関係があるとわたしは思っている。

なぜなら,裏表なく,誰が見ていようが見ていまいが,人が好まないことでも,楽しくないことでも,やらなければならないことをやり抜く人は必ず,自らの目標を達成する人であり,他者からの信用と信頼が厚いと思うからである。

先輩たちが,トイレ掃除について,こんなふうに語っていた。

「便器を磨く。きれいになる。これが気持ちいい。自分もきれいなトイレを使いたい。だったら,他者もそう思うだろう。だから,きれいにするのがあたりまえだと思ってきた,トイレ掃除に,その人の人間性が表れると思う」と。

やはり,誠実さ,真面目さ,正直さは, クラブ活動でも勉強でも、日常生活の基本中の基本だと思い知らされる。諸君も,掃除に象徴されるように,人が好まないことでも手を抜かず,心の中をいつも誠実に,真面目に,そして正直にしておくことを願う。私も,誠実,真面目,正直さを忘れずに生活しようと思う。

「正直は最善の方策である」という英語のことわざがある。「Honesty is the best policy.」

2024年度。誠実であり,真面目であり,正直であろう。

 

いま,世界は戦争中だ。ウクライナやパレスチナのガザが戦場だ。アフガニスタン,アフリカのスーダン,シリア,ミャンマーの圧政など。世界のあちこちで権威主義の独裁者たちが人権と平和を侵害し,自由や民主主義を踏みにじっている。

中略

ガザは,日常生活が壊滅状態で,すでに3万人以上の人々が亡くなっている。家を奪われ,食料が届かず,餓死寸前の子どもが悲しい顔をして「怖いよ,死にたくないよ」と言っている姿を見て胸が抉られる。

2024年も,民宅先輩のように,読書に親しんでほしい。本を読むことによって,想像力,思考力,協調性,そして,論理性が鍛えられる。

いま,ロシアに攻撃されているのはウクライナだけではない。ロシア国内の自由な言論であり,国際社会の秩序であり,わたしたちが平和に暮らす生存権であることを見逃してはなるまい。

ウクライナの詩人,オスタップ・スリヴィンスキーさんは,住民や避難民から直接,戦時下の日常を聞き取り『戦争語彙集』としてまとめた。

この本には,とてつもない暴力の恐怖の中にあることばの数々が横たわる。が,正直に言えば,わたしたちの日常とあまりにかけ離れすぎている戦争という現実を,わたしは理解するのにとてももがいている。しかし,わたしたちは,この現実から目を背けるわけにはいかない。

『戦争語彙集』から,キーウに暮らすマリーナさんの証言を引く。タイトルは「恋愛」。

レストランでのデート。テーブルにはろうそくの灯り。夢見ていたとおりの時間。だが,ほどなく砲撃が始まる。レストランは閉まり,やがてすべてが営業停止。彼は,ミサイル部隊に入っているから,今度は前線に配属される。わたしたちはさよならを言わなければなりませんでした。

どうすれば戦争を止めることができるか。どうすれば,人々がいがみ合わず,支え合いながら「共に生きる社会」を築くことができるのか。どうすれば,人が人として尊重され,差別されず,幸せに生きることができるのか。………。学習や学問,社会での仕事は,結局はすべて,これらのことを探究,追求するためにある,とわたしは考える。

わが盈進は,誠実さ,真面目さ,正直さを基本に激動の120年の歴史を刻んできた。2024年度も,誠実さ,真面目さ,正直さを基本に生活する諸君が,新しい盈進の歴史をつくり,答えのない時代を切り拓くために, 先輩たちにつづいて, 真のChallengerであり,Pioneerであってほしいと願う。

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