2020年05月01日
2020(令和2)年5月1日
生徒のみなさんへ
盈進中学高等学校
校 長 延 和聰
「弱い立場」にある人への「共感する力」をもとう
「みなさんはすべて、かけがえのない盈進の生徒です。連休明けの、君たちの元気な声と笑顔を心待ちにしています。元気で!」。休校に入る前日の4月15日と次の週の「登校日」に、そう伝えました。「君たちの笑顔」にまた、会えなくなりました。とても悲しいです。
また、同じことを伝えます。みなさん、自分の命と健康を自分で守って下さい。それが盈進の先生方に共通するみなさんへの最大のお願いです。それが家族を守ること、大切な人を守ることにもなります。「命と健康さえ忘れなきゃ」、取り返しがつきます。不安だからこそ、焦(あせ)らずに、そして、「自分も感染するかもしれない」という緊張感をもって、毎日を規則正しく過ごしてください。
人は人に出会い、人のやさしさやあたたかさを感じたり、人の苦しみや悲しみを自分のことのように感じたりできる。そうして、人と人がつながることに喜びを感じて幸せになる。人は、自分の幸せを人に伝え、また人と人とが出会い、手と手をとり合って、人の環(わ)を大きくする。その「人と人とがつながっていく」力を、「共感する力」と呼ぶのだと、私は思います。
しかしいま……このウイルスは、人がつながる場所や空間に、人に宿って潜(ひそ)み、感染を拡大させています。だから、集まってはならないし、移動してもいけないし、触ってもならない。「うつさないで」という恐怖心がひろまり、人を遠ざけ、差別するという現象が起きています。このウイルスは、人とのつながりを分断し、「共感する力」や「人を信じる力」という、人がもつ根源的な力を、私たちから奪おうとしているんじゃないかと、私は感じています。
「人との接触を極力、減らしてください」。正しいことです。だけど…と私は考え込みます。半身不随の年老いた母(福岡在住)は、施設暮らしなので、介護員さんや看護師さんの直接の手助けがあるから、生きていられるのです。日常的に介護を受ける高齢者や障がいのある人、看病を要する患者さん、幼い子どもたちは、母と同じく、社会的に「弱い立場」にある人で、彼らは人との接触を避けることはできないのです。
これらの人々を受け入れている施設で、感染が広がる事例があり、利用者や職員などに対する差別や誹謗中傷が報道されていますが、私は、人として許せないと思っています。彼らは、「弱い立場」にある人たちの命を守るために日々、私たちに代わって働き、社会生活を保ってくれているのです。清掃業の方も、運送業の方も、飲食業の方も、理美容師の方もみんな…
死者の数も連日、目にし耳にします。単なる数字ではありません。その数だけ、そのご家族がいて、深い悲しみがあるのです。それは、少し先の、私たちのかけがえのない家族の悲しみかもしれないし、大切な仲間の悲しみかもしれないのです。
私たちは、こんなときこそ、人として、想像力を働かせ、「弱い立場」にある人に共感する力をもたなければならない、と私は思います。でなければ、私たち人は、このウイルスの恐怖に押しつぶされてしまうかもしれません。でも逆に、いま私たち人が、これまで以上に、他者に共感する力もてば、このウイルスの問題が落ち着いたときに、新しい形の人と人とのつながりを創造し、未来に希望をつなぐことができるのだろうと思います。
休校が長引きます。電話で、メールで、読書で、絵画で、音楽で、料理で、大切な人とのつながりを感じてください。普段では感じ得なかった、確かな人とのつながりを感じられたとき、私たち人は、「いま」を希望に変えることができる気がしています。
元気で!私たち盈進の教職員は力を合わせて、みなさんのサポートの準備を怠りませんから。