2020年06月05日
2020年6月5日
生徒のみなさんへ
盈進中学高等学校
校 長 延 和聰
大切な君(あなた)
学校再開。どんな1週間でしたか。会いたかった友達に久しぶりに会えました。先生方にも会えました。うれしくて、友達とくっついて、じゃれ合って、気がついたら「3密」を守っていなかった自分がいたとか…「そりゃうれしいよな。仕方ないな」と思います。そんな光景をほほえましく見つめる私も少し、気が緩んでいるのかもしれません。
先週末、クラブ活動のために下校する生徒たちを盈進坂で見かけました。何人もマスクをしていませんでした。
5月末、「電車内でもマスクをしてほしい」と外部の方から電話をいただきました。「家の中以外ではマスク着用」はすでに社会的なエチケットになっていると思われます。「自他の命と健康を守る」「他者を気遣う」ためのエチケットです。電話をかけてこられた方は「エチケット違反」と言いたかったのかもしれません。危機の感じ方は人によってまちまちなのです。
暑くなってきましたからマスク内がむれてやっかいに感じますね。私も同じです。ただ、新型ウイルスは終息していません。まだ、多くの命を奪っています。私も含め、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ものです。でも、「備えあれば憂いなし」です。楽観しすぎず、悲観に傾きすぎず…
自戒を込めてみなさんにお願いです。他の地域の状況を見るまでもなく、第2波、第3波は「必ずやってくる!」と考えていた方がいい、と思っています。何度も同じことを繰り返しますが、ひとりひとりの自覚が大切です。先生方の指示を守ることはもちろんですが、日常において、自分たちで「3密を避けよう」「換気をしよう」「マスクをしよう」と声を掛け合って、自分と大切な「あなた」を守ってください。お願いします。
5月19日、帰宅後の食卓でテレビに見入りました。「彼女、すごいね。俺にはできないよ」とつぶやき、じんわり目頭が熱くなりました。妻もいっしょに、「ほんと、すごいね。かわいいね。きれいね」と言って、画面から目を外しませんでした。抗がん剤治療中のオリンピック選手の池江璃花子さんが、ウィッグを外した短髪姿を披露していました。
『Asahi Weekly』(英語学習の新聞)の一面に大きく彼女の姿がありました。タイトルは「Beacon of hope」(希望の光)。コロナの騒ぎで心身ともに疲れ、逆境に立たされている人々に少しでも希望を感じてほしいと、彼女は考えて写真を公開したのだそうです。こう、解説されていました。「“My wish is that this message will provide a little hope”she said.」
「自分は自分。君は君。私もあなたも、ありのままでいいよ。飾らなくていいよ」と言う彼女。自分が辛いときも他者を気遣うことができる19才の彼女に、やさしさと勇気をもらいました。
「マスクをしなくてはならない」。「正しい」ことが、すべての人にあてはまるわけではありません。それで困っている人もいます。聞こえが不自由な人は、相手の口の動きでことばを認識しますから、困るのです。「正しい」の外に置かれた人たちのことも考えられる人でありたいと思います。
こんな短歌に思わず微笑みました。「しばらくは 離れて暮らす コとロとナ つぎ逢ふ時は 君という字に」(『日経新聞』5月13日)。逢(会)いたかった君(あなた/友達)に久しぶりに逢えた1週間でした。このよろこびを忘れずに、自分と大切な「あなた」を守ってください。