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2021年度 入学式 校長式辞

2021年04月04日

テーマ「仲間と共に! Be a challenger、Be a pioneer」

 

盈進坂300本の桜が、新緑の葉っぱ交じりに、みなさんを歓迎しています。

中学121名、高校286名、計407名の新入生のみなさん、入学おめでとう。

保護者のみなさま、お子さまのご入学、誠におめでとうございます。

数ある中から私学盈進を選んでいただき、心から感謝申しあげます。

 

中略・・・

わが私学盈進は、創立者藤井曹太郎先生によって1904年(明治37年)に創立され、今年で117年目を迎える全国でも屈指の伝統校である。この間、わが盈進は、幾多の戦争と、激動の時代を乗り越え、いま、ここにある。

政治、経済の世界をはじめ、法律の世界、スポーツ界、芸術の世界など、あらゆる分野で活躍する卒業生約3万人が、母校盈進と諸君を見守っている。

地元福山、府中市の企業の約70%が盈進OB、あるいは関係者が会長,取締役などの最重要ポストに就いておられる。まさに、地元の経済界を支え、発展させてきたのは、わが盈進の同窓生であると言っても過言ではない。

この117年の間、校舎も、東町の製糸工場跡からはじまり、三吉町校舎を経て、1972年(昭和47年)に、この千田町へ移転した。以来、今日まで49年が経過したが、2年前、高校校舎新築、校舎正面に広い図書館を設置、ICT環境も整え、昨年度は新グランドもすべて完成し、諸君は、全国に誇るどこにもない、極めて機能性の高い校舎で学習できる。

諸君はこの歴史と伝統の私学盈進へ、いま入学した。是非ともこの歴史と伝統を深く自覚し、盈進生として常に、他者への感謝を忘れず、とりわけ、社会的に弱い立場にある人たちの痛みを感じ、寄り添う気持ちを持ち、謙虚に、そして誇り高く生活してほしい。盈進の教職員はみな、心を合わせて、諸君を心から愛する。愛することは支え合うこと。愛することは、「共に学び、共に生きる」ことである。

新型コロナウイルス感染の社会状況に心身共に疲れているのではないかと心配している。会いたい人、大切な人に会えないのは、本当に辛い。だから一期一会、出合いを大切に。その時、その時を大切に。そう、私は言いたい。

この問題は、国境を越えたglobalな現代に生きる人間が引き起こした人間社会の矛盾であり、また、国境のないglobalな現代に生きる私たち人類が、避けては通れない問題である。いまこそ、ひとりひとりが、ひとりの人間として、毎日をどう過ごすか、そして「どう生きるか」、自分自身が問われている。

 

これから、「仲間と共に! Be a challenger、Be a pioneer」というテーマで話をする。

考えてほしい。諸君、学校生活で最も大切なものは何だろうか。それは、「仲間」だと、私は信じている。かけがえのない仲間がいれば、悩みも相談できる。痛みを分かち合える。だったら、勉強も、授業も、クラブも、行事も絶対に楽しい。

だから、とことん、いま出合った仲間を大切にしてほしい。心から信頼できる仲間をつくってほしい。そしてひとりひとり、誰にも負けずに明るく笑顔であいさつをして、相手を敬い、一生付き合う「生涯の友」をつくってほしい。盈進には、「eスマイル宣言」という、どこの学校にもない、生徒自らがつくった、仲間を大切にするためのルールがある。それに従って日々、生活しよう。

盈進の建学の精神は「実学の体得」。すなわち、「いかなる時代であっても社会に貢献する人材となる」である。そのために、自分はどんなひとになるか、どんな職業に就いて、どのように社会に貢献するかを、常に自分に問うて、悩む。将来のことを仲間と大いに語る。語ってはまた悩む。その、問うて悩むプロセスと時間が自分を鍛えるし、夢大きく、目標を高くしてくれると私は確信している。進路目標は、本日配布される『輝く先輩』の冊子を大いに参考にして、高い目標を建てて、妥協せず、日々努力してほしい。

そのためにも、そして、こんな時こそ、本を読む。盈進図書館「みどりのECL」で本を借りる。新刊本が6000冊ある。世界の絵本もある。本は必ず、私たちに「どう生きるか」という哲学を身につけるヒントを授けてくれる。

諸君、本や新聞は、「答え」を得るために読むのではない。本や新聞は、私たちが日々、充実した毎日を生きるために「問い、悩むヒント」を授けてくれるのだ。

だから、考えること、探究することが楽しくなる。だから盈進図書館「みどりのECL」で本を借りて、また新聞を読んで、自分で問い、考え、悩み、また考えるのだ。

中学生は、盈進独自の、盈進にしかない「読書科」でどんどん、本を好きになってほしい。本や新聞を読む人は必ず、高い進路目標を自ら獲得する人である。

 

さまざまな統計を駆使した新型コロナ対策で世界的に注目を集める「台湾の天才」を知っているだろう。台湾の「デジタル担当大臣」。オードリー・タンさん。トランスジェンダーでもある。

タンさんは心やさしき子どもだった。他の子どもがクモの巣にものを投げつけて遊んでいるのを見て、クモの巣がなければ獲物が取れなくなるクモのことを心配して、「クモがかわいそうだ」と泣いた。また、小学校で、「1+1=2です」と言う先生に、「2進法だと解は2じゃない」と高度な知識を示すこともあった。このように、一般的な「ごく普通」の子どもではなかったタンさんは、いじめに遭い、学校に通えなくなった。

両親は、学校からはじき出されたタンさんをどう見守ればいいのか、悩み、葛藤した。その時に、ある一冊の本が両親の心のよりどころとなった。

その本を紹介する。世界の35言語に翻訳され、40年近くにわたって読み継がれて、日本国内だけでも計800万部売れた大ベストセラー。私は30数年前に読んだ記憶があるが、いま述べたオードリー・タンさんの新聞記事を読んで先日、再読した。挿絵は、私が大好きな画家、いわさきちひろさんである。そう、その本は、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』。

黒柳徹子さんは、誰もが知る玉ねぎのような髪型の女性。今年88歳。『徹子の部屋』の司会、『世界ふしぎ発見』のレギュラーなどでもおなじみだ。国連ユニセフ親善大使となって紛争や貧困にあえぐ世界の子どもたちに慈愛の手を差しのべる心やさしき人である。

トットちゃんこと黒柳徹子さん。トットちゃんは少し風変わりな少女だった。小学1年生の時だった。クラスメートは、ちゃんと授業を聴いているのに、トットちゃんは教室の窓の向こうが気になる。だから席を立って、窓の向こうに話しかける。「ねえねえ、何してるの?」。話し相手は誰か。ちゅんちゅんと話す鳥たちだった。だから、トットちゃんは、悪い子というレッテルを貼られ、学校を辞めさせられて、別の小学校に通うようになった。時は日本が太平洋戦争に負ける少し前である。

転校先のトモエ小学校の校長先生は、転校の日、トットちゃんの話を4時間も聞いたという。「何でもいいから話してごらん」と。そしてそっと、トットちゃんにつぶやいた。何と言ったか。「君は、本当はいい子なんだよ」。

このことばが、トットちゃんこと、黒柳徹子さんの人生を支え続けた。トモエ小学校には、障がいのある仲間もいて、みんな仲がよかったと、黒柳さんは記している。

自分が大切にされた。だからあなたも大切にされる。誰もがみんな大切な人。そんなトモエ学園で、黒柳さんは仲間と共にのびのびと、自分の好きなことやって、好きな道に進んだ。オードリー・タンさんのご両親はトットちゃんとタンさんを重ね、タンさんにしかない才能と個性を信じて見守ったのだ。

 

諸君。諸君もみな、ご家族にとって仲間にとって、私たち盈進の教職員にとって、かけがえのない大切な存在だ。諸君はみな、必ず素晴らしい能力がある。

盈進は、諸君の才能と個性をとことん信じる。だから盈進で自分と仲間を大切にする。自分と仲間の個性を尊重し合い、自分と仲間を好きになり、学習でもクラブ活動でも、とことん好きなことを見つけて、やり抜いてほしいと願う。

だから常に、盈進共育「仲間と共に、自ら考え、自ら行動する」ができているかを問うて、悩みながらも日々努力し、前進しほしい。決して、妥協してはならない。成せばなる。

意志あるところに道は開ける。「Where there is a will, there is a way.」である。

 

世界を見渡そう。ミャンマー軍が暴走し、多くの市民が殺されている。許せない。だが、決して対岸の火事ではない。「あなたに起きることは私にも起きる」のである。

どうすればこの暴挙を止めることができるだろうか。どうすれば、コロナのような病に慄かなくてもいい社会を構築できるだろうか。これから、仲間と共に、問い、悩み、それを繰り返し、また考え、地域の安全、世界の平和、人類の幸せのために貢献する人材となってほしいと願う。

 

諸君。きょう出合った仲間と、これから出合う先輩たちと、固い友情を育み、新しい盈進の歴史と伝統を築いてくれることを大いに期待する。激変するこの時代に、希望の光を灯すために、果敢に挑戦するchallengerとして、新時代を切り拓くpioneerとして、そして、常に努力を惜しまない誇り高い盈進生として、建学の精神「実学の体得」~社会に貢献する人材になる~ために、常に問い、悩みながら、自分を鍛えてほしい。「仲間と共に! Be a challenger」挑戦者たれ、「Be a pioneer」開拓者たれ。盈進はそんな諸君を日々、全力で応援する。

2021年(令和3年)4月4日 盈進中学高等学校 校長 延 和聰

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